吐息で、眠らせて。 Novel by 夕冴 |
死ぬのなら。 お前のその唇で、息の根を止めてくれ。 嘘でイイなら、愛の言葉を囁く事は簡単。 虚行でイイなら、セックスする事は簡単。 じゃあ。 何がイチバン、真摯な愛を伝えられるだろう? 「なぁ、啓介……」 シーツの中から、アニキが声を掛けてくる。 全く、珍しい事もあるモンだ。 アニキはセックスした後は、必ず無口になって。 煙草を一本吸い終わると、俺を抱え込んでさっさと寝ちまうから。 「何、アニキ……?」 「お前は、愛されてると思うときはあるか?」 ホントに、なんてオトコだろうか。 自分が恋とやらの相手である俺に、何て事を聞きやがる。 でも。 なんでアニキがそんな事を聞きたがるのか、純粋に興味もあって。 俺は。 話に乗ってやる事に、する。 「思うとき、ねぇ…セックスしてるときとか?」 「オトコなんて、結構誰にでも勃つんだぜ?」 それでも、そう思うのかなんて。 チクショウッ。 揚げ足を取って、聞いてくるから。 「じゃあ、愛してるとか…云われたとき?」 「啓介、人間は平気で嘘が吐けるんだぜ?」 また。 ムカツク、言い草。 でも。 何となく、アニキの云いたい事が解かって。 俺は。 ソレを、言ってみる事にする。 コレでダメだったら、終りだけど。 「じゃあ、キスしてるとき……」 「……けいすけ」 「なんかアレって、息の根を止められてるみたいだからな」 その言葉に、アニキの顔色が変わる。 ちょっと、嬉しそう。 「それに、アニキ以外とはキスもしたくねぇし?」 ソレって、愛だろう。 アニキ以外には、俺を殺せない。 一方のアニキは、何が愉快なのか。 咽喉の奥で、笑って。 そして。 俺に。 深い、キスをする。 「啓介、良く聞いておけ」 傲慢な命令口調に、ソレは言い捨て。 とても似合わぬ、甘い睦言を吐く。 宛ら、狂気を含んだ。 ソレは。 絶対なる、愛情。 俺が死ぬときは、お前が殺せ。 その唇で、俺の息の根を止めてくれ。 忘れるな。 俺を殺してイイのは、この世で唯一お前だけ。 お前を殺してイイのは、この世で唯一俺だけ。 ねぇ、アニキ。 今でも、イイ。 アンタのキスで、俺を殺してくれ。 End. |
吐息で、眠らせて。 なんてすごいタイトルだ。 その言葉だけで、その先にある何かを、 想像させる。 静かに流れる時間の中、 それは心を麻痺させ、 甘やかに二人を狂わせる。 夕冴さんより、いただいた素敵なSS。 この世界観、引き寄せられる。 MIDI by 煉獄庭園 様 |