つないだ手








 秋の夜長、ガレージの奥からがさがさと音が聞こえる。


 がさがさと言うよりは、かさかさかもしれないが…。


「うわ、懐かしい!」


 啓介は古びた箱の中に収まったそれを持ち上げて大きな声を上げる。


「なんだ? それは?」


 涼介は啓介の手に持たれたそれを訝しげに見つめた。


「七夕の時の飾りだよ、これ!」


 箱に収められた飾りをひとつひとつ取り上げながら呟く啓介に涼介が苦笑する。


「どーしてこんなところにあるんだろう?」


 短冊と色取り取りの七夕飾り。


「…なあアニキ、うちって最後の七夕祭り……いつやったっけ?」


 一枚の青い短冊を懐かし気に見つめ、啓介が呟いた。


「……お前が小学生のころじゃないか?」


 しばらく考えそう呟いた涼介は、啓介の手に持たれた短冊を見た。


 啓介は涼介にそれが見やすいよう向ける。


 その目が穏やかに眦を下げた。


「………啓介、それは」


 昔、涼介が書いた短冊だった。


「アニキ、こんなこと書いてたんだ」


 ニヤニヤ笑った啓介に、涼介が照れくさそうに呟いた。


「まぁ…ガキの頃だからな」


 短冊に書かれた言葉に啓介が呟く、その表情は嬉しそうで。


「でもフツー書かねーよ、こんなこと。よく御袋たちが許してくれたよなぁ…」


「子供の言葉だから、深く考えていなかったんだろう」


 涼介が呟いた。


「啓介とずっといっしょ……か」


 今、まさにそれを実行している自分。


「願うことじゃないだろうが、な」


 願掛けする柄でもないが、あの頃はこう書けばそれが叶うと信じていた。


「願わなくても俺がアニキから離れねーよ」


 そう言って涼介に寄り添う啓介、その表情は優しく笑んでいて。


 言葉なく、ゆっくり頷く、涼介の眼差しも穏やかで。


 願い事を書いた短冊をふたりでそっと握り締める、優しく、包み込むように。


 そのまま過去への階段を下りるよう、あの頃の気持ちを胸に抱くよう。


 この想いと流れてゆこう。


 つないだ手からは秋の匂いがした。












キリバンをGetしてくださった方が忘れてしまっているのではないかと心配になりますが、


お題の「七夕」も過ぎてしまいましたが、何とかUPする事が出来ました。


どうぞお納め下さいませ(^^*)