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web拍手2006 TAXT総集編

All TAXT by 鷹遠










ACT 1





「なー……アニキ、ちょっと聞いていい?」

「どうした、啓介?」

「あのさ、前から疑問に思ってたんだけどさー」

「ほう」

「ぶっちゃけさぁ、童貞ってあげるもんなんか、捨てるもんなんかな。どっち?」

「………」

(啓介! なんてことを口にする!! と内心は思っている涼介、しかし表だって冷静)

「何故、そう思うんだ?」

「だってさー、女だと『処女をあげる』っていう言い方するじゃん。だから野郎だとどっち

なんかなーっと思って、ただの疑問だけどな。あはははははは」

(啓介、かなり豪快に笑う。ナパーム発言自体は一切気にしていない)

「そうか………………。」

「そうそう。あ、アニキ、飯食って帰ろうぜ。俺ヨシ牛が食いたい!」

「ああ、わかった」

(何故だかどっと疲れた涼介、頑張れ、お兄ちゃん。Fight一発??)



オチがあるようでない、そんな兄弟の会話。






2006.9.20up 文責 by 鷹遠






ACT 2






 ごろりと横になって本を読む。

 涼介はサイエンス誌、啓介は漫画本やカー雑誌。

 最初は背中合わせ、だけどその背はそっと、寄り添い合っている。

 やがて、時間の経過で体位変更、ゴロゴロ、グルグル。

 ふたりは互いに一番心地のいいポジションを発見した。

「あ、ごめん。重くね?」

 啓介はそう言って、心地よかった場所から頭を上げる。

「いいや、構わない」

 そう言って、啓介の頬を指先でなぞる涼介。

「アニキ、あったかー…」

 満面の笑みを浮かべる啓介。

「お前もあたたかい」

 嬉しそうに目を伏せる涼介。

 秋の休日、陽だまりの午後。






2006.9.20up 文責 by 鷹遠






ACT 3





「おーい、涼介?」
 史浩がきょろきょろしながらFCに近付いてきた。
「しー! 静かにしろよ!!」
 啓介は咥え煙草を止め、小声で呟く。
「どうした啓介、そんなところで煙草吹かして…。涼介から今日の課題は聞いたのか?」
 その横に史浩が立ち、FCの中にいるその人を見た。
「何だ、寝てるのか」
 史浩も声のトーンを落とし、苦笑する。
「そ。三〇分したら起こしてくれってさ」
「涼介に不可能はない。不死身っぽいっていうか、何でも出来る奴だからサイボーグっぽい奴だなーっと思ったけどさ、こいつだってただの人間じゃないか。こんなになるまで無理しやがって…」
 史浩は小声でぼやくと、夜空を見上げる。
「アニキの好きなことだから、多少無理してもやっていけてるんじゃね? だからアニキが無理してんのは知ってても、絶対に出来ない無茶なことしないの、俺は知ってるし」
 啓介はそう言って、満更でもない表情で涼介を見た。
 それは、たとえ様のない、静かな微笑み。
「お前たちは本当に、特別だなぁ…」
「それ、どーゆー意味さ?」
 啓介は史浩の言葉にくすくす笑う。
「俺たちから見るとそのままの意味なんだけどな」
 周囲からすればふたりが繋がっている部分を、多様な面で見受けることが出来る。
 それは特別な存在だと、その言葉で、態度で。
 このふたりはおそらく、何らかの媒介や、喩表の言葉にしなくとも、どこかしら、分かり合うことができている。
 それがこの兄弟の、特別の法則。






2006.9.20up 文責 by 鷹遠





ACT 4





「啓介、こちらにきてちゃんとしなさい」


「ちゃんとしなさいなんて、俺のこと幾つだと思ってるんだよアニキ」


「お前は俺の弟だからな、ほら、一緒に頭を下げる」


「てーかそれ、答えになってねーし」


「俺も頭を下げるから、な? 言うことを聞いてくれ」


「んじゃ、せーのでする」


「そうか、それじゃあ」


「せーの」


 ペコリ。


「これからも頑張ります」


「拍手をありがとな?」






2006.9.20up 文責 by 鷹遠






ACT 5






「ほえ? 何これ? パチパチ音しねぇ?」
「これはweb拍手といって、今までメールや掲示板を利用しないと伝えられなかったwebサイトの管理人への応援の気持ちやサイトの感想を、ボタン一つだけで伝えることを可能にするために開発された、webサイト管理人と閲覧者を繋ぐ最も簡単で、全く新しいタイプのコミュニケーションツールだ」
「ふーん」
「啓介、お前……。今の言葉の意味、ちゃんとわかったか?」
「ようは、楽しかったですとか、もっと更新速度早くしろとか、お前誤字脱字あるじゃんよ! って突っ込みいれるツールってことか?」
「…………。間違いではないが、それもやり方によっては管理人や文責者が凹む結果になるかもしれんな(苦笑)」
「つか、やりかたっしょ? 褒めゴロスも叩きタオスも」
「ところで啓介、手に持っているソレはなんだ?」
「あ? これ? ガチンコハンマーv 拍手でバチバチ叩くのに必要じゃね?」
「どこからそんなものを用意したんだ。物騒な」
「物騒なのは夜明けのビール瓶だっつーの、しかも割れてるの、あはは」
「どちらもマシンを壊しかねないから止めておけ。というか拍手は指先でマウスをクリックするだけでいいんだ」
「えー、でも言葉も入れたくね?」
「メッセージを残すのもいいと思うが、注意事項がある。拍手は連続10回までの投下、一回につき半角で100文字、全角で50文字のメッセージを入れることが可能だ」
「ふーん」
「このweb拍手は、『ハートを伝えるシステム』というクサいコンセプトで運営されているらしいが、とてもいいことだと思わないか?」
「ま、確かに言葉を残してもらえるのは嬉しいな」
「言葉がなくとも拍手をクリックしてもらうだけで、ここ見てくれているんだって思えるわけだ」
「クサいコンセプトって言うけどアニキ以上にクサイ奴、いないと思うぜ?」
「どうしてそう思う?(ニヤリ)」
「その紅バラ、なんなのさ?」
「ああこれは、拍手を押してくれた皆さんに、ありがとうの心をだな…」
「んじゃ俺からも、拍手くれた奴にむぎゅってしてやる」
「それだけは止めてくれ、啓介。それはお兄ちゃんだけのものに、お兄ちゃんだけにして」


 このままだとオチがつかなさそうなので、終わる。






2006.9.20up 文責 by 鷹遠






ACT 6


 口笛を吹いて歩いた。


 低い音の口笛が吹けなくて、チッと舌打ちする。


 抜けるような、青空。


 正しく青天、だけどここにひとり。


「逢いたいなぁ・・・」


 そう呟いて、また口笛を吹く。


 貴方がいなければどうしても吹けない、未完成のメロディ。


 だけど。


 決して忘れたわけじゃない。


 自分だけが先に進んだわけじゃない。


 今も、同じ空の元で。


 この気持ちは、繋がっている。


「・・・でもやっぱ、逢いたくね?」


 啓介はそう呟いて、どうしたって音の出でない、口笛を吹いた。






2006.10.10up文責 by 鷹遠






ACT 7





 はっきり言うと、振り返る時間は日々少なくなっている。


 白衣を翻して、急ぎ足で歩く。


 院内ではどんなに忙しくても走ってはいけないと、上から言われていた。


 目的地の外来の入り口に鏡が置かれていて、足を止めた。


 鏡に、自分の顔が映ったからだ。


 そして一瞬、自分の顔が啓介かと思った。


 今一瞬だけ、啓介とその世界が繋がったような気がして。


 涼介は、何故だかくすぐったい気持ちで、息をつく。


 啓介の顔が見たい。


 その声がもっと聞きたい。


 その手のひらに触れることが出来たら、きっとこの、窮屈な世界が変わるのだろう。






2006.10.10up 文責 by 鷹遠






ACT 8






 頼りなく、ふたつ並んだ影。


 その影は良く似ていて、ふたりはしっかり手を繋いで、同じ歩幅で歩き出す。


 ふたりでいるということは、言葉で何かを伝えるより確かに、その気持ちを伝える。


 やわらかな指先を絡めて、沢山の空と、沢山の太陽と、沢山の月を数えた。


 その頃から、ふたりは永遠の、何を望んだのだろうか。


 今までも。


 節張った指先を絡めて、沢山の空と、沢山の太陽と、沢山の月を数えた。


 ふたりの時が、途切れないように。


 全てを感じて、その全てで生きる。


 愛しさを、途切れさせないよう。


 そっと、繋いでいた手のひらを離し。


「行ってくるな、アニキ」


「行っておいで」


 その言葉を、交わした。



2006.10.10up 文責 by 鷹遠





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